厚木研究開発センタ開設40周年にあたって

- NTT先端技術総合研究所
- 所長 岡田 顕
NTT厚木研究開発センタは、超LSI技術や新機能素子など材料・デバイス技術の研究開発を専門とする厚木電気通信研究所として1983年(昭和58年)4月に開設して以来、今年で40周年を迎えました。当センタは開設当初と変わらず、基礎・基盤技術の研究開発や実用化開発の拠点としての役割を担っており、現在その研究領域は、サステナビリティ技術、医療・ヘルスケア技術、情報人間科学・バイオ技術まで広がっております。当センタが開設してから40年が経ちましたが、この間、厚木市や周辺の森の里地域の皆様方のご厚意に加え、研究所の諸先輩や関係者の皆様方のご尽力により、基礎研究、応用研究、そして実用化開発を推進することができました。深く感謝申し上げます。
当センタには、クリーンルーム、低温実験棟、スポーツ脳科学実験棟、特殊実験棟などの研究設備や、これら研究設備を支える純水製造施設、集中ガス施設、廃液処理施設、廃ガス処理施設があり、最先端の研究開発を行える環境が整備されています。このような研究設備の維持管理や安全な運用には多くの方々のご協力が欠かせません。ご協力いただいている皆様のおかげで、当センタでの研究活動を円滑に進めることができています。心よりお礼申し上げます。
研究設備の一つである「スポーツ脳科学実験棟」は、2017年1月に発足したスポーツ脳科学プロジェクトが研究に活用している新しく整備された実験棟です。この実験棟は、放射光施設の跡地に、トップアスリートが、「また訪れたくなるような実験室」をコンセプトに構築しました。放射光施設は1985年にX線リソグラフィ研究用X線源として開発が始まり、現在の最先端のLSI技術と同じ数nm級の線幅を狙うという、当時としては極めて挑戦的な研究を行っていました。この放射光施設を活用して行われた研究は、現在の最先端の半導体微細化に用いられている極端紫外域露光装置(EUV露光装置)の要素技術、反射ミラーなどの光学素子の確立に貢献しています。
NTTは2019年5月に「IOWN構想」を発表しています。IOWNとはInnovative Optical and Wireless Network の略であり、光(フォトニクス)、無線の革新的な技術により、今のインフラの限界を打破し、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、多様性を受容できる豊かで持続可能な社会を実現する次世代コミュニケーション基盤です。このIOWN構想の構成要素の一つである、ネットワークから端末まですべてにフォトニクスベースの技術を導入して実現するオールフォトニクスネットワーク(APN)においては、その実現に厚木研究開発センタにおいて脈々と培ってきたエレクトロニクス技術とフォトニクス技術が融合した光電融合デバイス技術や光通信デバイス技術に高い期待が寄せられています。IOWN構想が当センタの先端デバイス技術の研究成果がトリガーになったといっても過言ではありません。所員一同、高いモチベーションを持ち、目標に向かって日々研究開発に励んでおります。
40年前の1983年4月1日に厚木電気通信研究所の渡邊誠初代所長はその訓示の最後に、発足に当たって所員から募集して決めた「厚木の森の里に育もう創造の樹を」という標語を紹介し、この言葉を抱いて立派な研究所に育てていこうと所員に伝えています。
私たちは挑戦的かつ大きな目標を掲げ、社会課題の解決と持続的でスマートな社会の実現に貢献できるよう、自然に恵まれたここ森の里において、これからも日々研鑽に励み、知の泉から多様な創造の樹を育み、グローバルな視野で幅広く活用できる技術を生み出すことをめざしてまいります。
今後とも変わらぬご支援とご助言を賜りますようお願い申し上げます。