NTTの通信サービスを支えるインフラ設備(図1)には、厳しい屋外環境においても高い安全性と信頼性が必要になります。また今後は、老朽設備の増加や保守人員の減少が進むと考えられ、通信インフラの保守管理についても、より一層の効率化が求められます。そこで私たちは、インフラ設備の劣化に関する機構解明や予測するための技術を研究しています。
インフラ設備の安全性や信頼性を高めるには、様々な環境に晒されるインフラ材料を適切な方法で評価・分析し、劣化機構の解明や優れた材料の選定に繋げることが重要になります。そこで私たちは、電柱(コンクリート柱)内の鉄筋や、鉄塔などに用いられる重防食塗膜の評価手法を研究しています(図2)※1。これらは従来の方法に比べて、実際の環境に近い雰囲気のもとで、より短時間に、材料の品質や性能を評価できるという特徴があります。
※1: 本テーマはDIC(NTTデバイスイノベーションセンタ)へ移行して実用化開発を推進中です。
また設備管理の効率化に向けては、これまでに蓄積された点検データを用いた信頼性分析や、外部データ(交通量、人口密度等)を活用して設置環境条件を考慮した統計解析を行い、リスク評価に基づいた設備管理を行うための研究を進めています(図3)。この技術は、対象設備の劣化・故障の発生確率、および劣化・故障が発生した際の被害の大きさ(影響度)をもとにリスクをコストに換算することが可能になります。また、リスクマトリックスによる対象設備の保守の優先度付けも可能とします。
このようにインフラ設備の材料レベルからの研究を行うことで、設備の高信頼化・長寿命化・環境負荷低減・メンテナンスコスト削減が可能となります。また、インフラ材料研究の知見を活かして、設備の劣化・故障に伴うリスク推定や予測を行うことで、これに基づいた保守の優先付けによる効率的な維持管理環境を実現することができます。