心臓の物理パラメータからの高速な心電図生成

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どんな研究?

心臓の状態を表すパラメータから高速に心電図を合成する手法

心電図の生成に絡む体内の様々な要因を表す心臓パラメータから心電図を合成する方法を人工知能技術をもとに構築しました。

応用場面

心臓パラメータと心電図のペアデータが獲得できるため、心電図合成は様々な場面での応用可能性があります。

検索|個人の心電図と合成済み心電図を比較することで、合成済み心電図に付随する心臓パラメータや心臓パラメータに対応する病名などが取得できます。

学習|人工知能(例えば、心電図からの心臓パラメータ解析)の学習に必要な大量のデータを高速に生成することができます。

どこがすごい?

心臓パラメータを考慮した心電図の合成

従来の心電図の合成手法の多くは、心電図の概形特徴のみに着目しています。例えば、心電図の概形を微分方程式で表現する手法や、心電図の特徴点であるPQRST波の位置を入力するDNNを学習する手法が存在します。しかしながら、心電図の真の生成過程には、体内の様々な要因が絡んでいるはずです。提案手法は、この様々な要因を表す心臓パラメータから心電図を合成できます。

高速な心電図の合成 

心臓パラメータから心電図を合成する既存手法は、有限要素法による厳密なシミュレーションに基づくものであり、スーパーコンピュータレベルの計算コストがかかります。提案法では、この有限要素法に基づいて心電図を合成する過程を、条件付き変分自己符号化器によって模擬することで、数秒程度で心臓パラメータから心電図を合成することを実現します。

実験結果

VAEが正解のECGを再合成可能か検証したところ、下図のように合成ECGの波形概形は正解ECGの波形概形と概ね一致しています。また、ECGの重要な特徴であるQSRT波の位置も、外部ツールによる推定誤りを除いて一致してます。

めざす未来

実際の心電図で頑健に動作するか検証し、他の機械学習手法のための学習データ生成や、医療現場における診察に貢献します。また、心電図を含むあらゆる生体情報を模擬する技術を確立し、心身の未来の状態を予測することで、ウェルビーイングの向上や医療の発展に貢献します。

関連文献

  1. Ryo Nishikimi, Masahiro Nakano, Kunio Kashino, Shingo Tsukada, “Variational Autoencoder-based Neural Electrocardiogram Synthesis Trained by FEM-Based Heart Simulator, ” Cardiovascular Digital Health Journal, Vol 5, Issue 1, pp. 19-28, February 2024.
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連絡先

錦見 亮 (Ryo Nishikimi)
コミュニケーション科学基礎研究所 メディア情報研究部 生体情報処理研究グループ

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