体表でとらえた音響信号からの体内音響推定

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どんな研究?

心臓は平常時にほぼ周期的に動いており、S1、収縮期、S2、拡張期の4つの状態を遷移します。各状態では異なる弁が開閉し、その振動によって心音が発生します。そこで、弁の物理モデルに基づく複数の振動成分が存在し、それらの振幅が心周期の状態に応じて変化するという仮定のもと、心音の発生機序を表現する確率的生成モデルを構築しました。さらに、観測された心音から心周期の状態および各成分のパラメータを推定する方法を考案しました。

どこがすごい?

心臓のどの部分からどのような音がでているかは、病気の有無や程度を判断するための重要な手がかりになると期待されますが、これまでは、体内で生じている様々な音を非侵襲的に個別に聴く手段はありませんでした。 提案モデルを活用することで、多チャンネル心音時系列の背後に存在する振動成分を抽出することができます。

適用例

大動脈弁狭窄症の患者の体表面で捉えた4チャンネルの心音を8つの成分に分解しました。提案法では弁の振動の物理モデルを用いているため、これらは心臓の各弁から発生している成分と考えられます。いくつかの仮定を置いて音源位置などをさらに調べてみると、8番の成分が大動脈弁に由来する音の主成分であると推測されました。

めざす未来

体表面でとらえた音から異常音の原因・位置を推定する技術の開発をすすめることにより,AIテレ聴診器の実現をめざします。

関連文献

  1. R. Shibue, M. Nakano, T. Iwata, K. Kashino, H. Tomoike, “Unsupervised heart sound decomposition and state estimation with generative oscillation models,” EMBC, 2021.

連絡先

渋江 遼平 (Ryohei Shibue)
コミュニケーション科学基礎研究所 メディア情報研究部 生体情報処理研究グループ

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