物理的拘束を活用した心臓の3D形状推定

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どんな研究?

生体の状態(特に心臓の状態)を直観的に把握するための試みとして、聴診器などで取得する生体音からリアルタイムにその形状変化を描画する技術の研究を進めています。心臓は平常時にはほぼ周期的に動いていて、その「音」に注目してみると、S1、収縮期、S2、拡張期の4つの状態を順に遷移しているものと捉えることができました。この状態遷移を改めて心臓の「動き」の観点で整理し直してみますと、下図に示しています通り、心房収縮期、等容性収縮期、駆出期、等容性拡張期、充満期の順に状態が遷移すると捉えることが出来ます。心臓は全身に血液を送るポンプの役割を果たしていますので、状態遷移を通じて、その圧力と体積とは物理的に特定の関係を保っていると期待されます。私たちはこの物理的性質に着目し、心音から推定される状態遷移に連動する心臓の動きを心臓らしい動きに従うように誘導する方法を提案しています。

どこがすごい?

本手法の特徴は、心臓(左心室)の形状モデル学習において、その時間的形状変化がポンプのような動きになるように陽に誘導される点にあります。より具体的には、三次元形状を表す汎用モデルのガウス過程に対して、その体積と圧力の関係を線形作用素として導入した点にあります。

めざす未来

生体の状態をマルチメディアを通してより直観的に把握しやすいように提示していく技術はヘルスケアの重要な一要素になると期待しています。我々のグループは、引き続きマルチメディアデータ解析技術の発展をめざしていきます。

関連文献

  1. M. Nakano, R. Shibue, K. Kashino, S. Tsukada, H. Tomoike: Gaussian process with physical laws for 3D cardiac modeling, European Signal Processing Conference (EUSIPCO), 2021.

連絡先

中野 允裕 (Masahiro Nakano)
コミュニケーション科学基礎研究所 メディア情報研究部 生体情報処理研究グループ

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