これまでの電池は、電子機器の普及に伴い、長持ち・高出力な性能が求められていることから、発火等への安全を前提に、高価なレアメタルや有害物質が使用されています。そのため、回収が難しいセンサ・電池を、そのまま土壌に放置すると、本来土壌に含まれていない成分もあるので、土壌や生物に対して影響を与える可能性があります。このような課題を解決する要素技術として、回収困難な場合も土壌や生物へ影響を与えない土に還る電池(ツチニカエルでんち®)を発想し、研究開発を行っています。
今回、新たに低環境負荷(無害・レアメタルフリー)な材料のみで構成された電池のコンセプトを提案し、試作品を開発しました。低環境負荷な材料には、土壌・生物等への悪影響を与えず土壌に還る「肥料成分」「生物由来材料」から選定しています(図2)。
また、電池の電極は、空気中の酸素が拡散できる3次元の導電性多孔体構造が必要です。従来の電極は、結着剤により粉末状カーボンを固形化し構造を形成していますが、結着剤はフッ素系樹脂等であり、燃焼時には有害ガスの発生、また土壌等に含まれていないため、低環境負荷な材料とは言えません。 そのため、無害な結着剤か、結着剤フリーな電極が望ましく、今回、生物由来材料に前処理を施すことで多孔体構造を有するカーボン化に成功し、結着剤自体が無いカーボン電極を実現しました(図3)。
「ツチニカエルでんち®」の動作確認をしたところ、測定電流1.9mA/cm2 において電池電圧1.1Vの電池性能が実現できました。また、電池が植物に与える影響を確認するために、植害試験を行った結果、本電池は、従来電池と異なり植物の成長に悪影響を与えないことを確認し、「土に還ること」というコンセプトを実現することができました。