技術入門

ネットワークキャリアのオペレーションとは
~第2回 NTTのオペレーション業務~

NIC ネットワークオペレーションプロジェクト

大柳 浩之(おおやなぎ ひろゆき)

#オペレーション#ネットワーク#業務紹介

2024/10/31

はじめに

こんにちは !NIC ネットワークオペレーションプロジェクトの大柳です。
前回の記事では通信サービスのオペレーションの概要について紹介しました。その中で通信サービスの大御所「電話サービス」の歴史を振り返る形で、オペレーションの進化を取り上げました。そこで本記事では、その進化した現在のNTTのオペレーション業務について紹介します。

第1回  オペレーションの概要(2024/6/24掲載)記事のリンクはこちら
第2回  NTTのオペレーション業務(本記事)
第3回  NTTのオペレーションシステム(後日公開予定)

NTTのオペレーション業務

前回の記事では通信事業における通信サービスの企画・設計、導入、課金、運用、フィードバックの業務の流れを紹介しました。本記事ではそれぞれの業務について紹介します。

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NTTのオペレーション業務の流れ

企画・設計業務

企画業務では、新しい通信サービスの内容を具体化し、そのサービスの実現に必要なネットワーク設備や技術を選定し、設備構築までに必要な設備設計、調達、工事といった工程とその実施時期の計画立案を行います。設計業務では、ネットワーク設備の構成や設置場所を決定する設備設計と、サービスの監視・保守を行うための体制設計を行います。以降、この順番で具体的に説明します。

新サービスの企画は、まずお客様のニーズを把握し、市場調査やマーケティングといったトレンドを分析することで10Gbpsのインターネットサービスや光回線を利用したテレビ放送サービスなどのサービスの内容を決定します。次にサービスを実現するために必要な機能と、性能やセキュリティといった非機能に関してネットワーク設備に対する要件を整理したうえで、それを満たす設備や技術を選定します。

計画立案は、作業を実施する組織や日数などを勘案して作成されます。NTTの通信サービスは全国に配置された設備をつなぎ合わせて提供されるため、特に調達や工事の計画立案においては、手戻りがないように実施内容と時期について綿密な計画を立てる必要があります。

設備設計では、サービスの内容を満たすネットワーク設備の構成や設置場所を決定します。具体的には、設備構成は、サービスの信頼性や想定ユーザ数等を考慮したうえで、設備の容量や冗長化構成を決定します。また、設置場所については、地震や水害などが発生した場合のサービスの継続性を考慮しエリアや場所を決定します。

監視・保守の体制設計では、設備に対する日々の監視や故障時に対応する組織の役割分担、連携方法について取り決めます。例えば、大規模サービスの場合は、故障時に社会的影響が大きいため、24時間×365日の輪番体制を組んでおり、故障発生時の対応として故障個所特定、現地での復旧作業、お客様への周知といった業務を組織で分担して行います。

導入業務

導入業務では、ネットワーク設備の設計に基づいた設備構築を行い、各設備が正常に動作していることを検証により確認します。その後、お客様から利用申込を受け付け、お客様へサービスを開通します。

設備構築では、設備設計で決められた設備構成や設置場所に従い、サーバやルータなどの設備を調達し、設置や配線の工事を行います。その後、設備へコンフィグを設定し、検証により各設備が正常に動作していることを確認します。 検証では、通信サービスを正常に提供できているか、実際に流れるトラヒックに欠けがないか、異常なトラヒック量になっていないかなどを確認します。また、設備故障時の復旧方法や、故障個所が不明な場合の切り分け方法について確認します。

これにより通信サービスをお客様へ提供する準備が整いました。お客様から利用開始の申込を頂き、申込情報をサービスオーダとして設備へ反映することでサービスがお客様へ開通されます。サービスオーダとは、お客様の申込情報から設備へ反映する情報を抜き出した情報であり、お客様を収容する設備へサービスオーダを反映することでサービスを提供できます。サービスオーダを抜き出す処理やコンフィグを反映する設備を特定する処理はオペレーションサポートシステム(OSS)により実現しています。OSSについては次の記事で紹介します。また、サービスオーダには、利用開始だけではなく、解約もあります。サービスオーダの処理数はNTT東西のフレッツ光のサービスでは1年間に約650万件*1、NTTドコモの携帯電話関連サービスでは1年間に約2,700万件*2にも上ります。


*1:2024年5月 IR プレゼンテーションより
https://group.ntt/jp/ir/library/material/2024/pdf/irpresentation2405.pdf

*2:株式会社NTTドコモ 事業データより
https://www.docomo.ne.jp/corporate/ir/binary/pdf/library/finance/annual/annual.pdf

課金業務

課金業務では、お客様の通信サービスの利用料金を算出し、お客様から利用料金を頂戴します。通信サービスには月々の利用料金が一定の定額料金と、サービス利用量に応じて料金が増加する従量料金があり、お客様の利用サービスや利用状況に応じてサービスの利用料金を算出します。算出した利用料金は請求書として郵送やWebを通じてお客様へ送られ、お支払い頂きます。もし料金の支払いを一定期間滞納すると、対象の通信サービスの利用を停止する処理が行われますが、料金のお支払いが完了すると、数分程度で再度利用可能になります。

NTTでは、お客様要望に応える取組として、携帯電話や固定電話、インターネットなどのそれぞれの請求書をバラバラに発行するのではなく、一括にまとめてお支払い頂く「おまとめ請求」や、24時間Webで利用料金を閲覧可能な「Web ビリング」などのメニューを用意しています。

運用業務

運用業務では、通信サービスを正しく提供できているか、ネットワーク設備が正常に動作しているか、を日々監視し、故障した設備の検知・特定を行う監視業務と、故障した設備の処置を行いサービスや設備の復旧を行う保守業務があります。ネットワークでは日々故障が発生します。設備故障により、通信が途絶えたり、通信速度が著しく低下したりするなど、サービス品質へ悪影響を及ぼします。そのため、設備故障をいち早く検知し、迅速に設備を特定し、適切に処置することが求められます。NTTではこういった運用業務を"ネットワークオペレーションセンタ"という拠点へ集約し、24時間365日、全国各地に点在する数十万台のネットワーク設備や200万Km超のケーブルを含むインフラの監視・保守を行っています。

監視業務では、作業者は設備が故障時に通知する故障を示すメッセージにより設備故障を検知します。故障メッセージには故障内容に加え、設備の名称やエリアの情報などが含まれており、作業者はこの故障メッセージを分析し、故障している設備や原因を特定します。しかし、1台の設備が故障した際に通知される故障メッセージが1件とは限りません。ネットワークには様々な設備が複雑に接続しており、1台の設備が故障した場合でも周辺装置から多数の故障メッセージが通知されます。作業者は多数の故障メッセージに対して、重要なメッセージを絞り込んだり、時系列順に並べ替えたりして分析を行うことで、故障している設備や原因を特定します。

保守業務では、監視業務で特定した設備の情報をもとに、故障している設備の部品の状態を確認し、処置内容を判断、実施することで正常な状態へ復旧します。故障部品の状態確認には、設備へログインを行い、トラヒックが流れているか、電源が入っているか、などを確認します。作業者はこの状態確認の結果から処置内容を判断、実施します。例えば、故障している設備の電源が落ちている場合は故障部品の交換処置を行い、また、故障している設備にトラヒックが流れている場合は故障設備へトラヒックが流れないように迂回させたうえで故障部品の交換処置や設備の再起動を行います。このように、保守業務では故障の状況や設備の部品の状態に合わせて処置内容を適切に判断することが求められます。適切な判断を行うために、作業者は設備の仕様や機能を把握し、様々な状況や状態を想定した訓練を行っています。

フィードバック業務

フィードバック業務では、新サービスの企画や効率的な設備投資などを実現するために、課金業務や運用業務で得られる情報を企画・設計業務や設備構築の業務へ展開します。例えば、運用業務で得られるトラヒック量や各サーバのリソース容量の情報を設計業務へ展開します。このリソース容量の情報を時系列分析することで、設計業務では、効率的な設備投資を実現する設備増減設を計画することができます。また、通信サービスの利用者数の推移や新規加入者数のデータを企画業務へ展開します。これらのデータをトレンド分析することで、新サービスの企画業務では、サービスに対する需要を精度高く見積もることができます。

このようなサイクルを定期的に回すことで新サービスの企画や効率的な設備投資などを実現し、高品質で安定した通信サービスを提供し続けることができます。

おわりに

本記事では、NTTのオペレーション業務について通信サービスの企画・設計、導入、課金、運用、フィードバック業務を紹介しました。
次回の記事ではこのオペレーション業務を支援するシステムであるOSS(Operation Support System)について紹介します。近年、LLMなどのAI技術の進展に伴い、OSSへのAIへの組み込みが大きな技術トレンドとなっております。是非こちらもチェックしてみください。

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