感性コミュニケーションを「集団をより良い状態に導く」技術と捉え、脳科学的アプローチによる研究開発を推進します。より良い状態とは、相互理解、合意形成、協調作業、創作活動など様々なタスクで高いパフォーマンスを発揮できる状態を指します。
個人ごとに異なる対象に対する捉え方や感じ方及びそれによって生じる感情などの人間の内面状態を他者と共有するための技術の研究開発を行っています。本研究では、言語化困難な主観的・感覚的な要素も含めた情報の共有を目指して、それらの情報が反映された脳情報をはじめとする生体信号を扱います。生体信号から個人の捉え方・感じ方を推定するニューラルデコーディング技術に関する取り組みと、脳で捉えられた情報を"脳の表情"として伝達するための脳内表象可知覚化技術に関する取り組みを紹介します。
コミュニケーションを円滑化するために、言語・非言語コミュニケーションでは共有することが難しかった人間の内面状態を生体信号から推定する技術の研究開発を行っています。例えば、対話相手からの指示や提案に対する違和感を脳波から特定する技術や、心拍や皮膚電気活動などの生体信号から対話相手に対する共感状態を推定する技術の研究開発を行っています。
言語・非言語コミュニケーションでは、感情や認知状態などの感性情報を100%正確に他者に伝えることは不可能です。我々はそれらの感性状態は脳の状態に表現されていると考え、“脳の表情”を多次元的な表現でリアルタイムに知覚可能にする技術の研究開発を行っています。この技術をメタバースMetaMeにおけるアバターオーラ生成に適用し、コミュニケーションに対する影響の確認を進めています。
感性コミュニケーションの目的は「集団をより良い状態に導く」ことである。そこで感性を伝達可能にする技術に加えて、お互いに理解し合い、協調し合える環境を作るために、集団の内面状態を導く技術の研究開発を行っています。
先行研究では、互いに共感している時や息が合っている時に心拍や脳波などの生体信号が同期する現象が確認されています。そこで我々は介入によって同期状態を誘発することで、集団を共感しやすい/協調しやすい状態へと導くことができるのではないかと仮説を立てて検証を進めています。
他者を理解し、集団での円滑なコミュニケーションを実現するための重要な能力として、共感があります。共感には大きく分けて、認知的共感(相手の感情状態を理解する)と情動的共感(相手と同じ感情状態になる)の2種類があり、状況によって適切な共感のタイプ、度合いが異なることが知られています。 我々は、これらの共感状態を生理的指標等を用いて推定するとともに、適切な共感状態に導く介入を行うことで、個々にとって負担感が少なく、円滑なコミュニケーションを実現することを目指しています。 また、共感や感情に関する研究において利用可能な映像刺激データセットを制作し公開しています。研究用途に限り無償で使用していただくことが可能です。