エネルギー循環技術

エネルギー循環技術

「エネルギー吸収」という概念を加えた新たなエネルギーサイクル

研究紹介

エネルギー循環技術は、エネルギーを「創る」、「運ぶ」、「貯める」、「使う」というこれまでのプロセスに、新しく「吸収する」を加えることで、持続可能で高効率なエネルギーサイクルを構築する技術です。ここでいう「吸収する」とは、従来は未利用のまま環境中に放散されていた排熱を積極的に回収・変換し、有用なエネルギーへと循環させることを意味します。

この新たなエネルギーサイクルを構築するためには、これまで十分に活用されてこなかった温度域の排熱を効率的に吸収し、それを電力や冷熱(常温より温度の低い熱エネルギー)として再利用する仕組みが不可欠です。単なる「エネルギーの節約」にとどまらず、排熱を新たな資源としてとらえ直すことで、社会全体のエネルギーフローを根本から改善することをめざしています。

排熱の中でも、排出量が大きく未利用のまま残されてきた低温排熱と、エネルギー密度が高く変換効率に優れる高温排熱を、研究開発の二つの軸として位置付けています。まず低温排熱については、データセンタなど情報インフラから生じる排熱を対象に、投入エネルギーを抑えつつ熱を効率的に輸送し、冷熱を生成する技術を研究開発しています。これにより、膨大な電力を消費する冷却システムの省エネ化が可能となります。次に高温排熱については、工場などから放出される排熱を対象に、光学的手法や熱電変換素子を用いて電力に直接変換し、高効率に再利用する技術の研究開発を進めています。これらの取り組みは、現場のエネルギー効率を飛躍的に高めるとともに、CO₂排出削減にも直結します。

未利用の熱エネルギーは、日本国内で消費される一次エネルギーの6-7割程度に相当する[1]と言われています。この膨大な潜在資源は、データセンタや工場だけでなく、さまざまな場所に存在しています。研究開発した技術の適用範囲を段階的に拡大していくことで、新たなエネルギーサイクルの社会実装に貢献していきます。

[1] NEDO ここまで来た熱利用 ~脱炭素社会を切り拓く熱の3R

あくなきチャレンジ

NTT宇宙環境エネルギー研究所では、社会課題の解決に向け、エネルギー、環境分野をはじめとして、情報科学、人文系、社会科学系を含め多様な人材を募集しています。