更新日:2019/11/07

    NTT R&Dフォーラム2019がいよいよ開催!IOWNはじめ、各カテゴリの注目展示を事前にチェック!!

    NTTの最新技術や研究成果を展示するNTT R&Dフォーラム2019。今回は5月に発表された新時代の革新的なネットワーク構想「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」がメインテーマです。「What’s IOWN? -Change the World」と題しIOWN構想に関する講演や関連技術をはじめ、NTTの各研究所や事業会社による最新の研究成果、サービスが展示されます。IOWN for Smart World、ネットワーク、AI、データ活用・管理、メディア・デバイス/ロボティクス、セキュリティ、基礎研究の全7カテゴリから、見どころや注目展示を各カテゴリからピックアップしました。

    [特別カテゴリ]IOWN for Smart World

    IOWN構想によって2030年の世界はどう変わるのか
    コンセプトや要素技術の最新成果に注目

    端末を含めてフォトニクス技術を適用する、次世代の革新的なネットワークであるオールフォトニクス・ネットワーク、マルチドメインの様々な拠点に散在するデータ、クラウド、ネットワーク、端末を用いたサービスを構築・運用するコグニティブ・ファウンデーション、多様なデジタルツインを掛け合わせてさまざまな演算を行うことにより、実世界の「再現」を超えたインタラクションをサイバー空間上で自由自在に行うことが可能な、新たな計算パラダイムであるデジタルツインコンピューティング、これら技術による将来構想をNTTが「IOWN」として提案しました。

    2030年をターゲットにNTTがどんなSmart Worldを形づくっていこうとしているのか、5月の発表に続き、今回は世界観やユースケースがここで初めて多くの来場者に向けて提示されます。構想の大枠をはじめ、どのような取り組みをしていこうとしているのかがR&Dの観点から示されます。

    IOWN構想では革新的な技術により、これまでのインフラの限界を超え、あらゆる情報をもとに個と全体の最適を図り、多様性を受容できる豊かな社会を形作ることを目指しています。展示はIOWN構想で目指す将来像をユースケースで示すものと、IOWN構想の実現に向けた要素技術の最新研究成果の2種類で構成されます。ユースケースでは、IOWN構想によって2030年に目指すSmart Worldに関する4つの展示が行われます。要素技術については、IOWN構想の3要素であるオールフォトニクス・ネットワーク、コグニティブ・ファウンデーション、デジタルツインコンピューティングに特に関連する16の展示が行われます。注目したいのは、将来像を示す4つのユースケースの展示に加え、すべての光化を目指すオールフォトニクス・ネットワークに関する要素技術の展示です。4月に発表された超低消費エネルギーかつ、高速信号処理が可能な光電融合型のLSIに向けた研究や、beyond 5Gを目指した研究が展示されます。

    [AI]

    コミュニケーション面でAIの進化を確認するデモや
    社会で使われているAIを使ったサービスも多数紹介

    NTTグループのAI関連技術「corevo」の最新の動向が紹介されます。今回は「人を支えるAI」、「社会を支えるAI」、そして「基盤技術としてのAI技術」という大きく3つのカテゴリに分け、事業会社からの出展も含めて28の展示が予定されています。AIが未来の社会を作るイメージだった時代から発展し、現在では実際に世の中でAIが活躍する場面も増えてきました。今回は既に成果提供されてサービスになっている技術と、さらなるAIの性能向上を目指した研究成果という2つの方向性に注目して頂きたいとのこと。既にサービス化されている技術については、事業会社主体で8つのブースが出展される予定です。

    注目の展示ですが、『ロボットと話そう「いつ、どこで、何をした」』(仮)ではAIとの対話デモが展示されます。これまでのAIとのコミュニケーションにおいては、会話をする際も人の方が機械に歩み寄り、考えながら話さなければ成立しませんでした。しかし現在のAIは文脈に沿った高度な会話ができるところまで進化しています。そうした機能の進化を、ロボットと対話するデモから体感できます。ほかにも「音の声認識から意味理解へ」(仮)では、NTTが長年取り組んできた音声認識技術の最先端の成果が展示されます。これまでの音声認識技術は音声をテキストに変換する際、表面的なテキスト情報だけを抽出していました。しかし最新の成果では非言語情報認識技術により、音声から発話属性・感情・意図・緊急度などの一部の意味を理解することができるようになってきており、その様子が見られる展示になる予定です。ほかにもスマートモビリティに関連して、データ活用・管理のカテゴリと連携した出展も予定されています。

    [データ活用・管理]

    ますます重要性が高まるデータ活用において
    戦略的に研究開発を行う6つの分野を展示

    データ自体に価値が認められる時代になり、誰もがデータを安全、かつ自由に利活用可能にする技術が求められてきています。今回データ活用・管理として独立したこのカテゴリでは、Smart Worldを実現するデータ収集・管理・活用技術として戦略的な6つのサブカテゴリを設定し、一つのサブカテゴリにつきいくつかの技術が展示されます。その中で、サブカテゴリ内のおすすめ展示を3つ紹介します。

    サブカテゴリ1の「多数のカメラ、空間センサの情報をリアルタイムAI解析する技術」の、「ひかりディープラーニング推論基盤技術」は、深層学習技術の経済性アップを可能にする基盤技術です。深層学習は学習と推論で成り立ちますが、サービス提供時に課題となる推論のリアルタイム処理を可能とし、さらに効率をアップさせる技術についてパネル等で展示されます。この技術では1台のGPUマシンに収容するカメラを従来の4台から30台まで増やし、多数のカメラ映像をリアルタイムAI解析できるようにしています。これを使えば、例えば多数の防犯カメラ映像の中から不審な行動をリアルタイムに検知する、といったようなことが可能になります。

    サブカテゴリ2の「多数の人、モノの状態をリアルタイムに収集する技術」では、「道路形状による車両検索を可能にする高速時空間データ管理技術」が展示されます。大量のコネクティッドカーやドローンなど、移動するオブジェクトの位置情報をリアルタイムに把握し、道路などの複雑な形状範囲内の位置情報を高速に検索可能とすることで、未来型のナビアプリなど、新しいアプリケーションの選択肢も増えるそうです。この処理の速度についてのデモで、従来技術との速度差を体感できる展示が見られます。

    サブカテゴリ3の「個人・機密情報を適切に保護しながら流通させ、統合分析を実現する技術」からは、「散在データ仮想統合技術」が展示されます。近年、企業間におけるデータ連携が注目されています。しかし、企業データの多くは営業秘密や個人情報を含むため、これまでは企業間でのデータ連携が困難でした。今回展示される技術では、企業ごとのデータ開示ポリシーを考慮して、データ分析を行う場所を変えたりすることで、データを社外に持ち出すことなく、企業間のデータ連携を行うことが可能になるそうです。

    プレゼンテーション画像
    プレゼンテーション画像
    左から データ活用・管理担当稲家 / サブカテゴリ3 山本 / サブカテゴリ1 三上 / サブカテゴリ2 宮原(敬称略)

    [メディア・デバイス/ロボティクス]

    活動を拡張する新しい体験展示の数々で示し
    Smart Worldの世界を体感

    将来のエンタテインメントを実現するメディア技術や、来場者に実際に体験できるHMI(ヒューマンマシンインタフェース)技術など、インパクトがありわかりやすい展示で目を引くのがメディア・デバイス/ロボティクスのカテゴリです。見て体感できる展示が多いのが特徴で、技術をベースに触れてみて感じられる展示を多く揃え、IOWN構想関連で新しいコンセプトを打ち出す展示も予定されています。新しい体験でわくわくして興奮できる展示もあれば、生活に近いところで支援も含めて現実を拡張するような展示、人の活動や行動を拡張、変容して新たな世界観の提示を目指す展示が予定されています。

    展示は3つの大きな要素で見せ、「現実世界で収集された様々な情報を活用し、将来予測やその人に合わせた情報提示により、人の活動の可能性を自然に広げる技術」、「仮想世界であたかも現実世界のような行動ができるようにその境界をシームレスにして、人の活動可能な領域を広げる技術」、「人の意識を自然に変え、行動を導くような技術」による構成となっています。現代の社会ではさまざまなデバイスが偏在し、人が能動的に情報にアクセスし、取得することができる便利な世の中になりました。しかし、こうしたデバイスなどを身近に持たない人や、上手に使いこなすことができない人もまだ存在します。それならば環境側から人に働きかけ、自然に人の活動を拡張できるような技術を提示し、どのような人でもSmart Worldの恩恵を受けられるような世界観を見せることが、この展示のメッセージとなるそうです。

    2019年5月に実証実験を行ったとして発表された、広域空間での動きをセンシングする、選手目線でハンドボールの試合を感じられるVR体験や、触覚などでスポーツを観戦する体験といったものがあり、楽しみながら技術を感じられる展示に注目です。

    [セキュリティ]

    「スマートな世界を創るセキュリティ」と
    「スマートな世界を守るセキュリティ」の両面で来るべきSmart Worldを支える

    セキュリティカテゴリにおけるキーワードは「スマートな世界を創る」と「スマートな世界を守る」です。暗号技術を応用して安全なデータ流通を促進し、企業活動の活性化や安全な日々の暮らしを実現するための積極的なデータ利活用を支える技術を「スマートな世界を創るセキュリティ」、そしてサイバー攻撃からIT、IoT、ISPなどさまざまなネットワークやITシステム、利用者を防御する技術を「スマートな世界を守るセキュリティ」として捉え、この両面で研究活動を続けています。汎用量子コンピュータの研究も進み、新しく出てくる暗号技術にも対応していく必要があります。今回は「10年後の安全なデータ流通の世界」とはどのようなものか、また、そうした世界を構成するネットワークや機器、利用者はどのように脅威から守られるかを提示し、そのために取り組んでいる技術が紹介されます。

    注目したいのは「スマートな世界を創るセキュリティ」分野の技術で、2019年9月に世界初の技術として発表された、暗号化したままディープラーニングの標準的な学習処理ができる秘密計算技術のデモンストレーションが行われます。データ流通において、取得したデータを分析・活用する際には、暗号化して保存されているデータであっても復号しなければ処理できず、サーバ側でデータが見えてしまうという課題がありました。このような技術によって、個人や企業に関わる情報の取り扱いに配慮しつつ、目的に応じて必要なデータを相互利用し、世の中の課題解決を進めやすくする世界を作っていくことを目指します。また、同じく「スマートな世界を創るセキュリティ」分野では、NTTテクノクロスと共同で匿名加工情報作成ソフトウェアが出展されます。2017年の改正個人情報保護法の施行により、個人情報を匿名加工情報として加工すれば、本人の同意なく第三者に提供することが可能になりました。このソフトウェアは既に商用化されており、2019年に追加した新機能のデモンストレーションと活用事例が展示されます。

    また、「スマートな世界を守るセキュリティ」分野では、ネットワーク上のサービス(ウェブサイトなど)を利用する際のユーザの心理的な弱みに付け込む攻撃(ソーシャルエンジニアリング攻撃)に対抗する技術、大規模ネットワークにおけるボットネット検知技術や、IoT機器やIoTネットワークを脅威から守る技術などが見られます。

    【開催概要】

    NTT R&Dフォーラム2019

    2019年11月11日(月)13:00~17:00、11月12日(火)10:00~17:00
    NTT武蔵野研究開発センタ

    <まとめ>

    メインテーマとなっているIOWNは、今回具体的に人の目に触れる形で構想のビジョンや要素技術が提示されます。NTTが描く10年後の未来がどのようなものか、体感できるでしょう。IOWN構想のために注力する研究開発は会場全体に展示があるので、それぞれのカテゴリを細かく見ていくことでより深く伝わることもあると思われます。

    数多くの展示があるR&Dフォーラムですが、取材時には「直感でわかりやすいタイトルを意識しているので、感じるものがあればぜひ来てください」という担当研究員の言葉もありました。タイトルを見て気になる、と思ったブースにはぜひ足を運び、日頃の研究の成果を御覧ください。

    魁生 佳余子

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