概要
現在、光ネットワーク用の光増幅中継器では、約 4 THzの光増幅帯域を持つEDFA(Erbium doped-fiber amplifier)が用いられており、波長多重された80波長程度のデジタルコヒーレント光信号を中継間隔約 80 kmで伝送可能です。豊富な波長資源をフレキシブルに活用するオールフォトニクス・ネットワーク(APN)の実現にむけては、より多波長の広帯域な光増幅中継器が必須です。本技術では、光パラメトリック増幅技術を用い、その増幅媒体としてNTTで研究開発しているPPLN(Periodically Poled Lithium Niobate:分極反転ニオブ酸リチウム)導波路を適用しています。これにより、従来と同じ中継間隔 80 kmを保ちつつ、長距離増幅中継が可能な14.1 THzの世界最大帯域 (従来比約 3倍以上)を持つ光パラメトリック増幅中継器を実現し、広帯域波長多重信号の一括光増幅中継伝送に成功しています。
背景・従来課題
現在の光ネットワークでは、約4 THzの増幅帯域をもつ光増幅器(EDFA)が広く用いられており、波長多重されたデジタルコヒーレント光信号を、中継間隔約80 kmで光のまま増幅中継し、目的地まで長距離伝送しています。従来は、既存の光ネットワークと同じ中継間隔を保ちつつ、伝送する1波長あたりの光信号の⾼速化によって伝送容量の拡大をはかってきました。NTTが提唱するIOWNの基幹網となるオールフォトニクス・ネットワークにおいては、豊富な波長資源を活用したフレキシブルな光ネットワークの実現をめざしており、1波長あたりの光信号の高速化に加えて、利用可能な波長資源(光帯域)の拡大が求められています。
本技術のアドバンテージ
- 構成を変えることなく、10THzを超える広帯域波長多重信号を低雑音・低歪みで一括光増幅中継可能
- 変調速度(シンボルレート)・変調方式、偏波多重の有無など、入力光信号のフォーマットに無依存
利用シーン
- 豊富な波長資源を必要とするオールフォトニクス・ネットワーク
解説図表
技術解説
光パラメトリック増幅技術(OPA:Optical Parametric Amplifier)とは、物質中で生じる非線形光学効果を利用して、異なる波長の光同士を相互作用させることで、特定の波長の光を増幅する技術です。非線形媒質として、高非線形ファイバやニオブ酸リチウムが知られています。NTTは、独自に開発を進めてきた分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN: Periodically Poled Lithium Niobate)導波路による光パラメトリック増幅を用いた広帯域増幅中継の可能性を世界に先駆けて実証してきました。
担当部署
未来ねっと研究所 トランスポートイノベーション研究部