更新日:2023/11/30

    次世代の大容量基幹光ネットワークを実現する空間モード多重を用いた長距離光増幅中継伝送技術NTT未来ねっと研究所

    概要

    増加を続けるトラヒック需要に応えるため、NTTでは基幹光ネットワーク基盤技術の研究開発を進めています。これまでの光ファイバと同じ直径を保ちながら伝送容量を10倍に拡大可能な空間モード多重光ファイバを用いて、世界最長(1300 km)の10空間モード多重信号の光増幅中継伝送に成功しました。これは既存の光ファイバの物理容量限界を超えた将来の大容量長距離基幹光ネットワークの実現に寄与することが期待されます。

    背景・従来課題

    基幹光ネットワークは膨大なトラヒック需要に応え続け、実用光通信システムの導入が始まって以来40年間で6桁以上もの伝送容量拡大を実現してきました。しかし、光伝送媒体として用いてきたシングルモード光ファイバそのものの物理的な伝送容量限界(キャパシティクランチ)が近年見え始めています。そこで、この限界を克服しうる新しい形態の光ファイバおよびそれを用いた革新的な光伝送技術の研究開発をすすめています。

    本技術のアドバンテージ

    • 光ファイバに備わる潜在的伝送性能を最大限に引き出し、次世代基幹光ネットワークの大容量化を実現します。

    利用シーン

    • 次世代ネットワーク

    解説図表

    技術解説

    近年、次世代の大容量基幹光ネットワークを実現する技術基盤として空間分割多重技術の検討が進められており、世界中で研究が活発化しています。この技術は光の通り道となるコアや空間モードを複数利用する新しい構造の光ファイバを伝送媒体として用いて信号を多重化する技術です。これにより、光ファイバあたりの伝送容量を飛躍的に拡大し、キャパシティクランチを克服することができると考えています。
    NTTでは、2008年頃より空間分割多重技術基盤の確立へ向けて関連機関と連携のもと、光伝送ファイバ、光増幅器、接続デバイス、光ノード、そして光伝送技術の研究に取り組んできました。これらの成果を結集し各空間モードの特性に適合した伝送設計により、2018年に空間モード多重大西洋横断級(6300 km)伝送実証に成功しました。2020年にはさらに、世界最長の空間モード多重太平洋横断級(9000 km)伝送実証に成功しました。また同年、コア多重技術と空間モード多重技術を融合した、36の光の通り道を持つ数モードマルチコア光ファイバを用いた3000 kmにわたる世界最長の高密度空間多重伝送を実証しました。さらに2023年には、世界最長の1300 kmにわたる10空間モード多重光伝送の増幅中継伝送実験に世界に先駆けて成功しました。これにより、空間モード多重ファイバによってこれまでの光ファイバと同じ直径を保ちつつ10倍の情報容量を長距離伝送できるポテンシャルを世界に先駆けて示しました。

    担当部署

    NTT未来ねっと研究所 トランスポートイノベーション研究部

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