今後の社会を支える革新的ネットワークの実現に向けた
研究開発に取り組んでいます。
今後の社会を支える革新的ネットワークの
実現に向けた研究開発に取り組んでいます。
NTTではこれまで、通信品質やトラヒック制御、AIによるネットワークオペレーションに関する研究開発を進めてきました。さらに、今後は多様な社会サービスを支えるICT基盤において需要・供給の見える化およびそのマッチングがより重要となると考え、これら一連の技術をMoHFI(Matching of Human Feeling/Intelligence、人間の感情/知性のマッチング)と名付け、研究開発を進めています。
今回はその中から、需要やネットワークの環境変化に自律的に適応しサービスを提供する「自己進化型ゼロタッチオペレーション」、そしてユーザにとって快適なサービスを提供しながら自社のネットワークやサービスのコスト削減を実現する「ユーザエンゲージメント・オペレーション」を説明します。また、新たに着手した「マルチプレイヤー協調」「トラヒックデータ価値化」についても紹介します。
NTTではこれまで、ネットワークの状態変化や異常を早期に検知する技術、異常の原因箇所や要因を特定する技術、似た特徴を持つトラヒックを自動分類するトラヒック分類予測技術など、ネットワークオペレーションの自動化・効率化に向けたさまざまな研究を行ってきました。
さらに現在では、これらの技術を基に、AIの活用によりネットワーク自身が需要や環境の変化を自律的に学習し適応したり、社会変革等の未知の状況に遭遇した場合にも自己進化し適応できる「自己進化型ゼロタッチオペレーション」の実現を目指しています。
自己進化型ゼロタッチオペレーションのロードマップを図2に示します。現在は人間により業務を自動化している「レベル1」にあたります。今後、人間とAIとの対話により業務の自律的な最適化を実現する「レベル2」、AIが未知の業務を自律的に最適化する「レベル3」を経て、最終的にはAIがあらゆる業務を自律的に最適化する「レベル4」を目指します。ちなみにレベル4では、事前に想定が難しい業務への対処も求められます。
「レベル4」の実現のため、NTTネットワーク基盤技術研究所、NTTネットワークサービスシステム研究所およびNTTアクセスサービス研究所が共同で技術開発を進めていますが、NTTネットワーク基盤研究所では以下の4点に注力して検討を進めています。
① AIの高度化
設備の増減やユーザの利用形態の変化等、ネットワーク内外で発生した変化に対して自律的に追従する技術、および分析に利用するデータの拡張を図る技術。
② AIの判断ロジックの可視化
ネットワーク内外のある変化に対する最適化処理としてAIがなぜそう判断したかの根拠および思考過程を可視化し、人間がそのプロセスを追えるようにする技術。
③ AIの品質管理
ネットワーク内外の変化をどのレベルまで検知できるか、また検知した変化に対してどの程度まで対処可能かを監査する技術。
④ 疑似環境での学習によるAIの進化
サイバー空間に設けたデジタルツインによりさまざまな現象をシミュレートし、そこでの学習を通じてAIを進化させ、未知の故障や災害等にも対応できるようにする技術。
ユーザにとって快適なサービスを提供しながら、自社のネットワークやサービス提供に係るコストを削減する技術が「ユーザエンゲージメント・オペレーション」です。ユーザの利用行動からユーザの持つ要望や利用継続に対する意欲などを推定し、ユーザに意識させることなく継続利用を促します。
ユーザエンゲージメント・オペレーションの実現には、サービス対するにユーザの体感品質を測定・可視化する技術、機器やネットワークの性能や品質を指標化・定量化する技術、観測されたデータから将来のサービス利用状況を分析・予測する技術、分析・予測結果をもとにサービスに関する推定を行い最適化に向けて制御する技術、の4つの周辺技術が必要となります(図3)。将来的には4つの技術を組み合わせ、有線・無線NW、サーバ、端末などの多様なリソースに対して、サービス提供者やエンドユーザの要望に基づきユーザエンゲージメントが高いサービスの提供を目指します。
現代のネットワークサービスは多数のネットワーク事業者、クラウド事業者、サービス事業者の相互接続により構成されています。そのため、他事業者のシステム状況を把握することが難しく、エンドツーエンドでの品質設計および監視・制御が課題となっています。
これまでは「自己進化型ゼロタッチオペレーション」「ユーザエンゲージメント・オペレーション」について主に自社網内で検討を行ってきましたが、こうした課題を解決するため、今後は他ネットワーク事業者やエネルギー等の他ドメインを含む「協調制御」として状態推定やリソース制御に関する研究を行っていく予定です。
制御の対象となる機器、制御に関するポリシー等が異なる複数のリソースを協調して制御することで、多様な社会サービスを支えるIOWN時代のICT基盤の確立を目指します。
ネットワークの異常の検知や最適制御には、通信トラヒックや通信品質に関するデータ、ネットワークやシステムのログおよびパフォーマンスに関するデータ、Twitter等の外部データ等、さまざまなデータが利用されます。
これらのデータの取得から汎用フォーマットへの変換までの工程では、データに応じた個別の処理が必要ですが、その後の分析や特徴的なデータの抽出においては汎用的な処理が可能です。これらの処理を共通化し、複数を組み合わせて目的に応じて提供する、新たなソリューション「トラヒックデータ価値化」の創出を目指します。
NTTでは、今後も「自己進化型ゼロタッチオペレーション」「ユーザエンゲージメント・オペレーション」「マルチプレイヤー協調」「トラヒックデータ価値化」の4テーマにおいて研究開発を推進し、ネットワークの完全自律オペレーションの実現を目指します。