リライアブル制御プラガブルネットワーク連携基盤
エンドツーエンドでネットワークの故障・品質劣化要因を瞬時に特定し信頼性・品質確保

技術背景・課題
社会インフラにおける通信キャリアが担う役割が拡大する昨今、信頼性や通信品質が確保されたネットワークの重要性が高まっています。このようなネットワークの実現に向けては、アクセスネットワークやデータセンタネットワーク等の複数のネットワークドメインをまたがり俯瞰的に信頼性・品質を確保する仕組みが求められます。また、通信キャリアが提供するMEC(Multi-access Edge Computing)・データセンタを活用した自動運転やAR/VR(Augmented Reality/Virtual Reality)等の新たなユースケースの広がりも加速しており、端末・アプリケーションの利用シーンに応じ、アクセス手段として通信キャリアがもつ移動アクセス・固定アクセスから適切なものを選択して利用可能であることも求められています。
移動固定アクセスを活用したネットワークサービスにおける信頼性や通信品質の確保のためには、複数のネットワークドメインをまたがる影響やアラートを伴う故障等発生時の復旧迅速化、およびエンドツーエンドでのサービス品質保証に向けた複数のネットワークドメインをまたがるリソース管理・品質可視化が必要となります。
技術の概要・特徴・内容
複数のネットワークドメインをまたがる信頼性・通信品質の確保を可能とする以下2点の技術の研究開発に取り組んでいます。
- 複数のネットワークドメインをまたがる設定・運用を協調させて早期の故障復旧を可能とするネットワークドメイン間運用協調技術
- ドメインをまたがるユーザ通信の品質保証を可能にするオンデマンド品質可視化・制御技術
これらの技術により、ネットワークサービスを確実に提供するための制御(リライアブル制御)に必要となる様々な機能を通信要件等に応じて自在に着脱(プラガブル)化しながら、複数のネットワークドメインの連携(ネットワーク連携)を可能とします。そのため、我々はこれら技術を総称してリライアブル制御プラガブルネットワーク連携基盤(以降、リライアブル制御)と名付けています。
技術目標・成果・効果
ネットワークイノベーションセンタではこれまで、様々なネットワークドメインに対するネットワークシステムやこれらを運用するためのオペレーションシステムの実用化を進めてきました。これまで培ったネットワークシステム・オペレーションの技術を基に、単一のネットワークドメインにとどまらず、複数のネットワークドメインにまたがる故障分析・品質可視化制御による通信の信頼性や通信品質の確保を可能とするリライアブル制御の実現に向けた研究開発に取り組んでいます。

以降、リライアブル制御を構成する2つの技術について解説します。
①ネットワークドメイン間運用協調技術
本技術は以下の機能で構成されます。これらの機能を用いることで、MEC基盤やクラウド、アクセス網を含むドメインをまたがるサービスの故障復旧・構築の迅速化による信頼性・可用性の向上と運用稼働の抜本的な削減を両立させることを可能とします。
- 複数のネットワークドメインに影響する故障発生時における各ネットワークドメイン内のルータやサーバ等の機器から大量のアラートに対し、ドメイン横断でアラートを分析して被疑事象推定を実現することで、ドメインをまたがる復旧対処までのリードタイム削減を可能とするドメイン間被疑事象推定機能
- 移動と固定のアクセス手段によらず共通に必要となる端末やアプリケーション個々のセキュリティ等の通信要件を満たすための通信制御ポリシを一元的に管理することで、ネットワーク提供リードタイムの削減を可能とするドメイン間ポリシ情報連携機能
②オンデマンド品質可視化・制御技術
本技術は以下の機能で構成されます。これらの機能によりアクセスネットワークと連携した品質可視化・制御を行い、エンドツーエンドでのSLAに基づく品質可視化・品質保証サービスの提供を実現します。
- ネットワークを利用するユーザ個々が要望する通信帯域や遅延等の多様な品質要件に応じたネットワーク監視や、端末・サーバ・アプリケーションの構成の変化への追従を可能とする、品質監視機能の動的な入れ替えや品質監視対象の変更を認証等と連携し行うオンデマンド品質監視機能
- 複数のネットワークドメインをまたがるエンドツーエンドでの品質確保に向けた、各ドメインから取得した品質メトリクスに基づき品質劣化被疑の推定や回復措置のリコメンデーションを行うドメイン間品質判定連携機能、およびアクセスネットワークが持つ品質制御の能力を活用して品質確保のための制御を適用可能とするアクセス品質制御機能
想定される適用分野・PoC
リライアブル制御により、移動固定融合ネットワークにおける信頼性の向上や運用コスト・提供リードタイムの抜本的な削減、および品質保証型サービス提供の実現が期待できます。
今後の展望
リライアブル制御の社会実装を進めるとともに、更なる信頼性・通信品質の向上を可能とする研究開発を進めていきます。