IOWNを支える技術解説

波長変換を活用した光伝送システムアーキテクチャ技術(Photonic Exchange)

オールフォトニクス・ネットワークがエンドツーエンド光直結パスを提供するための波長変換技術とマルチバンド伝送技術を具備した光伝送システム

Photonic Exchangeは、オールフォトニクス・ネットワークの大きな特徴であるユーザ間を結ぶ、エンドツーエンド光直結パスを需要に応じて柔軟に提供するための技術です。これにより、大容量、低遅延なトラフィック交流を低消費電力で実現します。我々は、新たに波長変換および波長帯変換技術を適用した光伝送システムアーキテクチャの提案やファイバ伝送路内の波長多重数を増やした際に最適な光強度調整技術の提案、実証を行いました。

技術背景・課題

IOWN構想を支えるオールフォトニクス・ネットワークでは、エンドツーエンド光直結パスを波長を占有する形で柔軟に接続し、大容量、低遅延なトラフィック交流を低消費電力で実現する必要があります。そのためには、オールフォトニクス・ネットワーク内の波長を柔軟にコントロールし、多数の波長を効率よく伝送させることが求められます。

これらの課題を解決するため、NTTは波長変換/波長帯変換技術を活用した光伝送システムアーキテクチャ「Photonic Exchange」の研究開発に取り組んでいます。

技術の概要・特徴・内容

NTTが研究開発を進める波長変換技術を活用した新たな光伝送システム(Photonic Exchange)は、光ネットワークの柔軟性と効率性を飛躍的に向上させる革新的なアーキテクチャです。以下の3つの技術的特徴を備えています。

  1. 波長変換:波長単位で任意の波長に変換可能な波長変換技術を光システムアーキテクチャに組み込むことで、管理者の異なるオールフォトニクス・ネットワーク間を接続するための波長整合を可能としました。
  2. 波長帯変換:NTTが研究開発を進めているPPLNを用いた波長帯変換技術を光伝送システムアーキテクチャに組み込むことで、異なる光学仕様が求められる複数種類の光ファイバ伝送路をまたがって接続することや波長収容可能数が少ない既存ネットワークや波長収容可能数が多いオールフォトニクス・ネットワークをまたがって光直結で接続することを可能としました。
  3. マルチバンド伝送長延化:光ファイバ内の多重波長数を増やすことで生じる非線形光学現象を簡易な情報で的確に推定し、適切な光ファイバ入力強度に調整することができる技術を考案し、プロトタイプに実装しました。

技術目標・成果・効果

Photonic Exchangeの技術は、光ネットワークの柔軟性と効率性を大幅に向上させることを目指しています。3つの技術的特徴について技術確立を進めています(図1参照)。

図1 Photonic Exchangeが実現する主な技術

1. 複数事業者・ネットワークを跨った光直結接続を実現する波長変換技術

波長単位で任意の波長に変換可能な波長変換技術をPhotonic Exchangeに組み込むことで、管理者の異なるオールフォトニクス・ネットワーク間を接続するための波長整合を可能とします(図2参照)。NECとNTTの共同研究の元、波長変換技術として、光-電気アナログ-光変換型波長変換を活用して機能実証を行い、その結果を報道発表を行いました。この方式を活用することによって、従来の波長を変更する方式と比較して、消費電力は約90%削減、通過遅延は約99%削減することができました。

図2 波長変換適用Photonic Exchange

2. 既存設備を活用したユーザ間光直結を実現する波長帯変換技術

PPLNを活用した波長帯変換技術をPhotonic Exchangeに適用することで、異なる光学仕様が求められる複数種類の光ファイバ伝送路をまたがって接続することや波長数が少ない既存ネットワークや収容波長数が多いAPNをまたがって光直結で接続することを可能とし、波長信号を終端することなく低消費電力に実現することができます(図3参照)。波長帯変換機能をPhotonic Exchangeに組み込むため周回実験による入力条件の評価や連続通過可能数の評価を進めて、APNへの適用性を明らかにしました。

図3 波長帯変換適用Photonic Exchange

3. 増加する波長多重信号を効率よく伝送させるマルチバンド伝送長延化技術

光ファイバ内の多重波長数を複数の波長帯に跨って増やすことで顕在化する非線形光学現象を簡易な情報で的確に推定し、適切な光ファイバ入力強度に調整することができる技術を考案し、効果実証しました。本技術を適用することにより、経済的にかつ効率よく波長多重数を増やすことができるようになりました。また、既存装置にも機能実装できるようにソフトウェア的にバージョンアップで対応できるような工夫もしています。

図4 マルチバンド伝送長延化技術

上記、技術を取り入れたPhotonic Exchangeのプロトタイプを製造し、APN-C等のAPNを構成する機能部と連携して機能実証を進めています。

想定される適用分野・PoC

オールフォトニクス・ネットワークを広く実現することによって、大容量伝送や低遅延が求められる放送事業者向けの遠隔メディアプロダクション等のデータ伝送に貢献します。

今後の展望

今後は、さらにAPNへの適用性を拡張していくため、マルチドメインのエンドツーエンド光直結接続や更なる波長多重数拡大を実現するための研究開発を行っていく。