情報処理基盤

将来の情報処理基盤実現に向けた取り組みを紹介します。

データ所有者とデータ利用者を安心・安全かつ超低遅延で結ぶ
「次世代データハブ技術」の技術開発

IoT技術やAI技術の進展により、世界中でやり取りされるデータ量は増加の一途をたどっています。しかし、それに伴い、データの通信や処理にかかるコストの増加、安全性の確保などさまざまな問題も浮上しています。今回はそれらの問題を解決する「次世代データハブ技術」を紹介します。

「次世代データハブ技術」とは

IoT技術の進展により、スマートフォン、新しい各種センサー、監視カメラなどさまざまな機器によりデータが収集され、サーバへと送られるようになりました。また、AI技術の発達により、そうして収集されたデータをサーバ上で高速に処理し、価値を高めて提供するようなサービスも多数登場しています。
それに伴い世界中でやり取りされるデータ量は増加の一途をたどっており、今後もこうした増加傾向は続くと予想されます。しかし、その反面、通信データ量および処理データの増加によるコストの上昇、またサービス提供における機密データの保護手段などがハードルとなり、サービス普及の妨げとなっている点も見逃せません。
そこで、こうした課題を克服し、データを中心とした「データ中心社会」を実現するソリューションとして期待されている技術が「次世代データハブ技術」です。

従来のデータ活用サービスでは、通常、図1の左図のようにセンサーから得たデータをいったんすべてサービス提供者のサーバに送り、そこで処理した結果に基づき、サービスを提供していました。この仕組みではデータ転送量、データ処理量ともに大きくなります。

図1 次世代データハブ技術
図1 次世代データハブ技術

一方、右図の次世代データハブは、内容に応じ必要なデータのみをサーバに送り処理します。次世代データハブの実現により、AI分析済みデータの相互利用、メタデータベース配送によるデータ転送コストの削減、より高度なデータアクセス、安全なデータの利活用などが可能となります。例えばリアルタイムの危険予測や要支援者サポートなど社会課題を解決するサービスを、街全体など大規模な範囲で提供することも可能となるでしょう。
以下に次世代データハブ技術の特徴を3つ紹介します。

次世代データハブ技術の特徴①-イベントドリブン推論基盤技術

一つめは「イベントドリブン推論基盤技術」です。
これはセンサー等により取得したデータをすべてサーバ側に送信するのではなく、必要なイベントのみデータとして抽出し送信する技術です。物体の検知、動きの検知などのデータ抽出処理は端末(エッジ)側で実行し、危険の検知や予測など、高度な処理を必要とする推論のみをサーバ側で実行します。

図2 イベントドリブン推論基盤技術
図2 イベントドリブン推論基盤技術

例えば映像処理では、映像の中から人物の映っている部分のみを、さらに言えばその人の骨格情報や顔の情報のみを抽出して送信し、サーバ側で処理します。これによりデータ転送量、データ処理量ともに低減できます。

次世代データハブ技術の特徴②―データフロー制御技術

二つめは「データフロー制御技術」です。
データ中心社会においては、ひとつのデータにさまざまな処理を行い、複数のサービスで使用します。そこで、複数サービスにおけるデータ取得方法の共通化、サーバ側でのデータの複製、データへの共通前処理の実施などを適宜実施し、柔軟で効率的なデータ処理を実現しようというものがデータフロー制御技術です。

図3 データフロー制御技術
図3 データフロー制御技術

次世代データハブ技術の特徴③―データサンドボックス技術

三つめは「データサンドボックス技術」です。
現在の仕組みでは機密性の高い情報を安全に流通させることは困難です。そこで次世代データハブでは、第三者から隔離された「データサンドボックス」という環境を用意してデータの安全な共有と処理を実現します。
具体的には、データとアルゴリズムをデータサンドボックス内のみで復号化して統計・学習・予測などの処理を行うことで外部からの覗き見を防止します。また、データサンドボックス内に配置した分析アルゴリズムを秘匿するとともに、相互認証・鍵共有などの技術も活用することで、多数の者の間での効率的なデータとアルゴリズムの提供と利用を実現します。

図4 データサンドボックス技術
図4 データサンドボックス技術

今後の展望

今回はデータ転送コストおよびデータ処理コストを削減するとともに、データ所有者とデータ利用者とを安全につなぐ「次世代データハブ技術」を紹介いたしました。
NTTでは今後も、IOWNグローバルフォーラムのパートナー各社をはじめ、皆様とともに次世代データハブ技術の研究を進めデータ中心社会の構築を目指します。

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