オペレータ業務を革新する協働型オペレーション技術
-単純作業の自動化から業務可視化、そしてヒトと機械/AIの協働へ

目次

はじめに

オペレーションのサービス多様化への対応や労働人口の減少に伴う課題解決に向けて、ヒトと機械/AIの協働による自動化やオペレータ支援に関する研究開発に取り組んでいます。

オペレータの操作を自動化するソフトウェア(UMS)

2013年、AS研ではオペレータの操作を代理実行(自動化)することにより業務を効率化するソフトウェアUMS(Unified Management Support System)を開発しました。UMSを利用することで、オペレータが行う業務システムへの画面操作の内、人間の高度な判断を必要としない冗長・単調な部分を自動化し、オペレータの負担を軽減することができます。また、操作の自動化によりオペレータの人為的ミスを防止する効果も期待できます。

UMSには大きく次の3つの特徴があります。

  1. 1.オペレータが行っていた煩雑な端末操作を自動化
  2. 2.シナリオの自動生成やビジュアル編集機能により特殊な開発スキルが不要
  3. 3.対象システムの改造及び新たなソフトのインストールが不要
  4. UMSの適用効果が大きい自動化例としては、GUIを介した業務システムのデータベース書き換え作業などが挙げられます。

    誕生秘話

    「UMS」は「ユーザーとアプリケーションの間に薄い皮を被せて、ユーザの業務画面操作をコントロールする技術」のコンセプトで誕生しました。 薄い皮をかぶせるという発想より当初のプロトタイプはニックネーム的に「薄皮饅頭システム(Usukawa Manju System:略称UMS)」と呼ばれ、アクセスネットワークの維持管理の現場で作業をしているオペレータへのヒアリングやPoC検証を通じて磨かれていきました。オペレータの操作をUMSが代理で実行することで、オペレータの負担軽減につながり、徐々に利用が広がりました。UMSは、NTTアドバンステクノロジ株式会社より「WinActor(ウィンアクター)」として商品化され、2017年ころからはRPA(Robotics Process Automation)ツール として認知されるようになりました。

    オペレータの操作プロセスの分析・可視化

    RPAを効果的に導入しオペレータの業務を改善するためには、業務の現状を把握し、効率化すべき作業や自動化が可能な作業を見つけたうえで自動化シナリオを作成するステップを踏む必要があります。一般的な方法は、現場担当者へヒアリングし、RPAを導入する作業やそのプロセスを把握する方法です。しかし、ヒアリングだけでは現場担当者の主観的なデータしか収集できず、オペレータの実際の操作に基づく客観的な分析ができないため、RPAを導入する効果が高いプロセスの発見が困難であるという課題がありました。

    そこで、PC操作をログとして記録し、観点・粒度を自在に切り替えながら可視化することで、オペレータの実際の操作に基づく客観的な分析を可能にする「業務可視化技術」を2019年に開発しました(図)。
    図 業務可視化技術の概要

    さらに、2022年にはオペレータの操作ログを作業毎に分類し、業務モデルやメインフローを抽出可能な「操作プロセス分類型業務デザイン支援技術」を、2024年にはRPA適用想定の作業手順と実際の現場の作業手順を比較することで、RPAがその現場に適合できるどうかを業務に精通した専門家でなくとも客観的に判定することができる「業務改善支援技術」を開発しました。

    本技術は、RPAの導入課題への適用のみならず、一般的な業務改善活動における課題に対しても適用が可能で、ヒアリングだけではない、オペレータの操作履歴に基づく客観的な分析を可能にします。

    プロセス自動化のための多様なアプリケーション連携

    PC作業の自動化を実現するためには、オペレータが従事する多様な業務環境に適用可能な自動化ロボットが必要です。また、業務によってはプロセスの一部をオペレータの判断に委ね、オペレータの判断に応じてプロセスを動的に組み替えるといった、オペレータと機械/AIによる協働的なプロセス自動化が必要な場合があります。

    このような背景のもと、私たちは2024年に「連携ナビゲーション基盤技術」を開発しました。本技術は、業務に最適化されたDXツールを効率的に導入可能にするための基盤となるものです。 本技術により、オペレータの業務状況に応じた自動操作や入力支援のDXツールを現場で簡単に作成することが可能になります。

    まとめ

    NTTアクセスサービスシステム研究所が開発してきた一連の業務支援技術は、アクセス系業務における効率化と現場主導のDX推進を強力に後押ししています。単純作業の自動化から始まり、ユーザの状況に応じた動的な情報支援、オペレータの操作ログ取得と可視化技術による客観的な業務分析、そしてヒトと機械の協働による自動化・オペレータ支援へと発展してきました。

    これらの技術は、単なる効率化にとどまらず、業務プロセスの透明化と継続的な改善を可能にし、PC操作に留まらない多様な業務に柔軟に適応可能にします。今後も、現場の声に寄り添いながらヒトと機械/AIの進化を支援し続ける協働型オペレーション技術にぜひご期待ください。

    関連する記事

人がやってた操作を、こんなに自動化できるなんてすごいね。

そうだね。でも、単調で時間がかかる作業は、RPAが代わりにやってくれるから、オペレータは判断や人の対応が必要なところに集中できるんだ。

へぇ~便利!しかも、現場の操作を可視化して、どこを効率化できるかも分かるんだよね?

うん。AIや自動化技術と協力することで、作業のミスも減るし、スピードもアップするんだ。

なるほど。まさに"ヒトと機械の二人三脚"って感じだね。

そうだね!現場の未来が、ますます明るくなるね。