更新日:2025/10/16
本特集では、地球環境の再生と持続可能かつ包摂的な社会の実現に向けた革新的技術の創出に向けて、NTT宇宙環境エネルギー研究所で取り組んでいるエネルギー関連の研究開発に焦点を当て、地球環境の未来を変えるさまざまな取り組みの最新状況を紹介する。

NTT宇宙環境エネルギー研究所における次世代エネルギー研究の現状
NTT宇宙環境エネルギー研究所は、地球環境の再生と持続可能かつ包摂的な社会の実現に向けた革新的技術の創出を目的に誕生し、設立から5年が経ちました。これまでのNTTの研究所にはない型破りな研究テーマに取り組み、具体的な成果も出始めてきました。本稿では、特にエネルギー関連技術に焦点を当て、地球環境の未来を変えるさまざまな取り組みの現状について紹介します。

ワット・ビット連携を通じたデータセンタの再生可能エネルギー利用量最大化に向けた取り組み
生成AI(人工知能)の普及により急増するデータセンタ(DC)の電力需要に対し、再生可能エネルギー(再エネ)の有効活用が課題となっています。NTT宇宙環境エネルギー研究所では、DC処理負荷の動的分散制御とDCの配置最適化という2つのアプローチで、ワット・ビット連携を通じた再エネ利用量の最大化に取り組んでおり、本稿では、その背景と課題、技術の全体像などについて解説します。

雷から人や設備を守り、エネルギーを活用する落雷制御・充電技術
NTT宇宙環境エネルギー研究所では、これまで培ってきた通信設備を雷から守る技術を大きく発展させ、重要インフラや街への落雷そのものをなくし、落雷させた雷はエネルギーとして活用する落雷制御・充電技術に関する研究を行っています。本稿では、ドローンを使用して自然雷を誘発、誘導するドローン誘雷実験、さらに、雷サージ電流を利用して雷のエネルギーを貯蔵する圧縮空気の生成実験の内容を紹介します。

光の技術を駆使した宇宙太陽光発電
宇宙太陽光発電は、宇宙で受けたエネルギーを地上へ無線で送る次世代のエネルギー技術で、天候や昼夜の影響を受けず安定した電力供給が可能です。NTT宇宙環境エネルギー研究所では、太陽光励起レーザ技術、長距離エネルギー伝送技術、高強度ビームエネルギー変換技術の研究開発を進めています。本稿では、波長1064 nmのレーザ光に対応した光電変換素子を開発し、1cm²で世界最高水準の変換効率を達成した成果を報告します。

核融合(フュージョンエネルギー)の実現に向けて──AIとデータサイエンスによる知の融合
核融合は次世代のクリーンエネルギーとして期待されていますが、実現には高温プラズマの精密な制御が不可欠です。近年、AI(人工知能)やデータサイエンスを活用することで、観測データから現在の状態を瞬時に推定する技術や数式モデルを推定する技術が開発されており、新たな制御方法の開発が進んでいます。NTT宇宙環境エネルギー研究所は量子科学技術研究開発機構(QST)などと連携し、AI・データサイエンス技術を融合した制御技術の研究を推進しており、異分野協創によるエネルギー革新に挑戦しています。