IOWN/6Gの導入が進む2030年代は、社会基盤としての無線利用が広く進展し、海や宇宙などの陸上以外も含めた超カバレッジ拡張、繋がっている事を意識しない高速大容量伝送、狙ったエリアに電波を閉じ込める自在な無線空間形成、無線環境把握と予測に基づく高品質・安定な無線接続が求められると予想される。
本研究部では、2030年のIOWN/6Gへの適用を見据え、
電波未踏領域の超カバレッジ拡張を実現する非陸上ネットワークに向けた高速な海中音響通信、衛星や海上ブイ等を用いた超広域IoTセンシングプラットフォーム、光ファイバ伝送に相当する無線xHaul技術として高速大容量伝送を実現するテラビット級無線伝送といった要素技術開発に取り組んでいます。
また、光デバイスを応用した新たな無線信号処理による光マトリクス無線ビームフォーミングや空間中で電波の波動を制御するマルチシェイプ波動制御、マルチモーダルな無線環境情報に基づく無線通信品質予測、複数端末の連携・協調による通信品質安定化といった既存の無線サービスとは一線を画す新たな価値を提供する情報通信基盤の実現に向けた研究開発にも挑戦しています。
こうした技術・研究開発を通じて社会に変革をもたらす新たな価値の創出に取り組んでいます。
波動伝搬研究部の代表的な7つの研究開発を紹介します。
海中では電波を利用することができず、高速な無線通信が難しい領域ですが、海中重機を使った無線遠隔施工や無人潜水艇を使った設備点検など、海中で無線を用いた映像伝送ニーズが顕在化してきています。本研究では、陸上無線で培った様々な信号処理技術を活用し、海水の濁りや太陽光の影響を受けない音波を用いた無線通信の高速化に取り組み、高精細な映像伝送が可能なMbps級の高速音響通信技術にチャレンジしています。
出展:テレ東BIZ ゆうがたサテライト(https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/you/news/post_269496)
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■技術ジャーナル
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■主要論文
IoT向け無線アクセスとして広域・低速で通信可能なLPWA※の利用期待が高まっています。海上ブイを用いた面的な海洋気象観測による気象予測精度の更なる向上や河川監視による水害事前検知など、地上通信網が整備されていない海洋や山間部等での超広域省電力センシングサービスの実現に向けて、LPWAを活用してセンサデータを低軌道衛星や高高度基地局などで上空から地球規模で収集する技術に取り組んでいます。
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■関連サイト
IOWN・6Gにおける大容量のネットワーク・情報処理基盤を支え、増大する将来の無線通信需要に備えるため、本研究ではテラビット級無線伝送の実現をめざしています。無線伝送を大容量化するため、電波の軌道角運動量(OAM)を用いて空間多重数を飛躍的に増大するOAM-MIMO※多重伝送技術を考案するとともに、100GHzを超える高周波数帯を用いて伝送帯域幅を拡大するべくサブテラヘルツ帯導波路技術に取り組んでいます。
※MIMO: Multiple-Input Multiple Output
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■技術ジャーナル
■報道発表
■主要論文
[4]H. Sasaki, Y. Yagi, R. Kudo, and D. Lee:"1.58 Tbps OAM Multiplexing Wireless Transmission with Wideband Butler Matrix for Sub-THz Band," IEEE JSAC, 2024.
2030年代の実現をめざす6Gでは、ミリ波以上の高周波数帯の活用が検討されています。高周波数帯での伝搬損失を補うため,数千~数万素子の超大規模アレーアンテナを用いた無線ビームフォーミングが必要になると考えられています。本研究では、光信号処理技術を用いて、複数信号を光波長上で多重して処理することで、超大規模アレーアンテナで複数ビームを同時生成する技術に取り組んでいます。引き続き素子数・ビーム数の増加と実用上の課題の解決にチャレンジします。
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■主要論文
[1]伊藤 他「光位相制御による無線2次元ビームフォーミングの送信実験」信学技報, vol. 123, no. 118, MWPTHz2023-28, pp. 126-130, 2023年7月.
IOWN/6G時代に向け、多種多様な機器が無線に接続されると想定されており、ユーザー間の干渉が課題となります。光学分野で培われた、特徴的な伝搬特性をもつ波動制御技術を電波に応用することで、自在な無線空間の形成を行い、干渉フリーな伝送の実現をめざしています。
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■表彰
Beyond 5Gでの無線通信において、通信帯域を確保するためにミリ波以上の高周波数帯のさらなる活用が期待されています。一方で、高周波数帯は物理的な遮蔽の影響を受けやすく、わずかな環境変化が通信品質に影響を与えます。そこで、我々は現在と過去の無線品質情報だけでなく、端末の位置や移動速度などの空間的な情報も用いて、遮蔽等による通信品質への影響を予測し、その結果をフィードバックし通信品質を安定化する検討を行っています。
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■技術ジャーナル
■報道発表
■表彰
[3]電子通信情報学会 通信ソサイエティ 2022年度 チュートリアル論文賞「フィジカル空間情報を用いた深層学習に基づく無線通信品質予測」
Beyond 5Gにおける無線通信の高速化に向けて、ミリ波以上の高周波数帯の活用が期待されています。
一方で、高周波数帯は物理的な遮蔽の影響を受けやすく、わずかな環境変化が通信品質に影響を与えます。そこで我々は、複数無線端末の連携・協調動作による高周波の通信品質安定化技術の研究開発に取り組んでいます。
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■主要論文
[1]景山, 他, "ミリ波帯における中継伝送を用いる端末協調技術の検討," 信学ソ大2023
[2]T. Kageyama, et.al., "Multiple UE link selection for 28GHz channel in 5G network," IEEE WCNC 2024
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