本研究テーマでは、ヒトの人格や思考といった内面を含む情報をデジタル化することで、今までにない価値を生み出すヒトDTC(デジタルツインコンピューティング)の実現に向けた研究開発を行っています。 ヒトDTCは、ヒトの外面に関するデジタル表現だけでなく、内面までのデジタル表現をめざしたものであり、ヒトの個性・特徴を再現するモデル(例えば,行動傾向,性格,価値観をモデル化した人格・思考モデルや、知覚、知識、言語能力、身体能力などをモデル化した能力モデルなど)はデジタルツインの振る舞いを規定し、サイバー空間における他者からの働きかけに対してあたかも本人のように反応することに加え、仮想社会において自律的に駆動させることで,本人のように他者に対して働きかけを行うこともできるようにします。 このヒトDTCの実現により、物理的制約を超えたさまざまなタスクの代替が可能になります。例えば、多人数の合意形成にかかる時間を短縮することや、感情やニュアンスなど高度な情報も伝達するコミュニケーションをサイバー空間上で実現します。 さらには、社会的側面や多様性に基づくインタラクションが実現できることで、ヒトの個性まで考慮した精密な分析、そして未来の予測を可能にします。
実空間上のヒト、モノ、自然環境等に関するさまざまな情報を収集可能にする未来のIoT機器の進化に向けて、それらヒトや動的オブジェクト(自動車、ドローン等)の情報をクラウド上で一元管理することで新たなサービス創出が期待されています。例えば、大量の車両から収集したデータを元に1分後に通過予定の交差点状況を通知するようなコネクテッドカー向けサービスやヒトの装着したウェアラブルデバイスから収集した情報を元に混雑していない、お勧めスポットを提案する拡張現実のような次世代サービスでは大量の動的オブジェクトのデータ管理が必要不可欠となってきています。 これらのサービスを実現するために、我々は大量の動的オブジェクトが一斉送信する情報の蓄積と、蓄積した動的オブジェクトの中から、ある時刻に、ある特定の地域にいる動的オブジェクトをリアルタイムに検索、分析する高速時空間データ管理技術 「Axispot®」に取り組んでいます。
デジタルツィンコンピューティング(DTC)研究センタでは大規模リアルタイムシミュレーション技術に取り組んでいます。この技術により、デジタル化された都市空間を構成するデジタルツインを用いてシミュレーションを行うことで、人流、交通流、物流、エネルギー等、都市全体の営みのリアルタイム最適制御や、都市や行政の中長期的な計画立案、意思決定を可能にすることを目指しています。 DTC研究センタで研究を行っている大規模リアルタイムシミュレーションは、「広域」「高精度」を特徴としています。広域のシミュレーションを行うために、例えば効率的に複数のコンピュータで処理することで高速にシミュレーションを行うことを目指しています。シミュレーションの高精度化には、都市における住民1人ひとり、車一台一台の動きなど、これまであまり考慮されてこなかった要素をシミュレーションに含めることで精度を向上することを考えています。