AIコンステレーションは、多様なAIモデルやルールを環境として与えることでAI同士が相互に議論・訂正を行い、人が要因推測すら困難な問題に対し、多様な視点から解を創出する大規模AI連携技術として、2023年度より研究開発を推進しているコンセプトとなります。
AIコンステレーションでは、複雑な問題に対し、様々な専門性を持ったAIがそれぞれの視点から意見を表明することで、多様な価値観を創出することを目指しています。また、専門性や将来価値から、それら多様な視点からの意見に対する重要さを互いに議論することで、少数意見を尊重し、コミュニティ全体の議論を高度化することを目指しています。NTTでは、このように多様なAIがつながり、相互に作用していくアーキテクチャを、星がつながり星座になっていくイメージをもって、「AIコンステレーション®」と名付けました。
AIコンステレーションが持つべきケイパビリティ(能力)を、人間の「創造性」と「個性」をメタファとして考えると、創造性・個性がいずれも高く要求されない定型的業務があり、そこに創造性が加わると持続的イノベーションが、さらに個性が加わることで破壊的イノベーションにつながると期待されます。今のLLMの適応範囲は定型的業務となり、人の作業をAIに置き換えることにより適用領域の拡大が期待されています。それに対してAIコンステレーションは、多様なAIによって「個性」を獲得しつつ、AI同士の議論によって「創造性」が増すことが期待され、人間の「置き換え」ではなく「支援」ができると考えています(図2)。
ユースケース(ユーザの要求や利用目的を明確に定義したもの)は2つの類型があると考えており、1つが「創造性や個性の拡大」です。何か物事を計画し、決めるときは、未来を想像してから逆算で考えますが、AIコンステレーションのように多様な視点で情報が提供できればユーザの視点拡大が期待できます。もう1つはコミュニティ議論とその高度化であり、多様な観点を追加することで知識や議論レベルが深まると期待されます(図3)。
AI同士の議論により多様な視点から解を創出することを目指したAIコンステレーションを活用し、地域社会問題に対してAIと共同で議論を行う市民参加型ワークショップ「会議シンギュラリティ」を開催しました。実社会では問題の複雑さや立場による意見の違いなど、多様な観点からの議論促進が求められており、AIコンステレーションにより人間同士の議論が深められるかを検証しました。
報道発表(2024年10月17日)
AI同士が議論する「AIコンステレーション」を活用した市民参加型ワークショップを開催
~専門性や個性をもった多様なLLMの集合知により地域社会の課題解決をめざす~
https://group.ntt/jp/newsrelease/2024/10/17/241017a.html
AIコンステレーション構想の未来像や将来コンセプトを明確化するため、『WIRED』日本版と共同で「AIコンステレーション・ラウンドテーブル」を実施し、同構想に対して多分野の有識者を交えた議論を実施しました。その結果は、以下「AIコンステレーション Blueprint」としてまとめました。
AIコンステレーションは、IOWN構想のAPN(All Photonics Network)により膨大なAI同士の知識交換をサポートするとともに、DCI(Data Centric Infrastructure)の多様なプロセッサ・分散ストレージにより大量のAIモデルを収容することで、人とAIが協調して多様性と公平性を確保した知識交流を実現します。これにより、個人や街・共同体、社会・世界など、多様なスケールで調和した社会の実現に貢献してまいります。
技術ジャーナル
NTTグループ・他研究所の取り組み
※「AIコンステレーション®」は日本電信電話株式会社の登録商標です。
最終更新:2025年5月