VHF帯加入者系ディジタル無線システム (TZ-68D)

2020年(令和二年)

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NTTは国内の有線設備の敷設が困難な山岳・島嶼地帯に対して、加入電話、公衆電話などの基礎的な通信サービスを複数種類の無線システムで提供しており、その無線システムの多くが数十年前から運用されています。NTTアクセスサービスシステム研究所は、有線設備の敷設が困難な地帯へ継続的にサービス提供するために、VHF (very high frequency) 帯加入者系ディジタル無線システム (TZ-68D) を開発しました。
図はTZ-68Dの利用イメージ、表はTZ-68Dの主な仕様をそれぞれ示しています。TZ-68Dは基地局と端末局の対向で構成され、60MHz帯の電波により無線通信を行います。通信可能距離は数十kmで見通し外通信が可能です。提供サービスはアナログ加入/公衆電話サービス、一般専用サービスです。将来の拡張性を考慮し、IP (internet protocol) 通信機能も搭載しています。各サービスの音声などのアナログ信号はTZ-68D内でディジタル化され、ディジタル無線変調によって情報が伝達されます。電話サービスの提供可能回線数は無線装置1対向で最大4回線です。5回線以上の提供を希望する場合は、アンテナ結合器を活用し各端1本のアンテナ配下に最大4対向を並列に設置して、合計最大16回線提供することができます。

TZ-68Dの利用イメージ

図 TZ-68Dの利用イメージ


表 TZ-68Dの主な仕様

TZ-68Dの主な仕様


TZ-68Dに実装された新規技術で最も重要なものは、長遅延波対策のための等化器切替制御技術です。遅延波とは周囲の山などに反射して山びこのように遅れてくる電波であり、遅延波が受信側で主波と重なり合うとビット誤りが発生してしまいます。遅延時間の長いものは特に長遅延波と呼ばれており、60MHz帯伝送は長距離通信が可能な反面、長遅延波の悪影響を受けやすい欠点があります。そのため、遅延波の重なりを解消してビット誤りを補正する等化器を具備しています。等化器にはいくつかの種類があり、主波と遅延波の受信電力の大小関係や遅延時間に応じて適したものが存在します。TZ-68Dは計3種類の等化器を具備しています。等化器切替制御技術は3種類の等化器を遅延波の状況に合わせて自動的に切り替える機能であり、この技術により安定した無線通信品質を確保できるように設計されています。

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