優良なDX施策を効率的かつ的確に広範囲へ展開する業務改善支援技術
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変化の激しい社会・経済状況に合わせた業務効率化と新たな価値創出の双方を推進できるビジネス変革を実現するためには、デジタル技術の活用が有効です。企業や自治体では、デジタル技術による現場主導の業務効率化(現場主導DX)やDX推進部署によるデジタル技術の展開等の全社的な業務のDXが推進されています。
現場主導DXは、昨今ではRPA※1 (Robotic Process Automation)等のデスクワークの自動化を実現する内製化ツールの活用により、業務での作業手順の自動化や効率化が進んできました。一方で、現場主導DXは現場個々の業務に最適化されて設計・実装されることが多く、他の現場にとっては現場主導DXの活用条件が自身の業務に適合するかの判断が困難です。現状では、DX施策と現場業務とをそれぞれ人手で観察して比較するしかなく、他の現場の多様なDX施策から適用可能な事例を選定するだけでも多くの稼働がかかります。これはDX推進部署においても同様の課題であり、全社的に波及する抜本的な業務改善のためにもDX施策の円滑な展開が重要です。このように、DX推進の効果を更に高めていくためには、現場とDX推進部署が互いに連携して、優良のDX施策を効率的かつ的確に広範囲へ展開するようなDXサイクルを実現することが必要です。(図1)
図1 現場とDX推進部署連携のDXサイクル
NTTアクセスサービスシステム研究所では、前述の課題を解決するために、PC端末上で行われた操作の履歴情報(操作ログ)を活用して、DX施策と適用を検討している現場の作業手順とを定量的に比較・可視化し、施策展開の分析・判断をサポートする「業務改善支援技術」を開発しました。本技術を、現場やDX推進部署ですぐに利用できるように、以下2種類のツールとして提供しています。(図2)
- 操作ログ取得ツール:PC端末上での画面・GUI※2(Graphical User Interface)の操作履歴を操作ログとしてリアルタイムに記録するツール
- 操作ログ分析ツール:取得した2種類の操作ログのデータを読み込み、操作ログを作業手順として単純化し、作業手順の類似性を定量的に比較し、人が理解しやすい形式で可視化するツール
これらのツールを利用して、DX施策が想定している作業手順と実際の現場の作業手順を比較することで、DX施策がその現場に適合できるどうかを業務に精通した専門家でなくとも客観的に判定することができます。
図2 業務改善支援技術を実装した操作ログ取得・分析ツール
次に、業務改善支援技術の中核をなす2つのNTT技術について解説します。(図3)
■NTT技術の特徴1 操作共起性による類似度評価
操作ログには、作業時の状況によっては操作の手戻りや別操作の割り込み等の揺らぎが含まれていることが多くあり、そのまま操作個々の類似性を比較するだけでは、類似作業であっても正しく類似性を判定することが困難です。そこで、類似作業での操作は相互に共起性※3を示すという、操作共起性を活用した業務の類似度評価技術を開発しました。本技術により、操作の揺らぎを吸収し、操作の前後が完全に一致していない作業が含まれる場合においても、類似する作業であれば正しく類似性を評価し、その操作範囲を抽出することができます。
■NTT技術の特徴2 操作の説明情報生成
操作ログには、操作が行われた時刻や操作対象(ボタンやテキストボックスなどのGUI部品情報)といった操作履歴を示す情報が記録されていますが、そのままでは人が見て理解するには適していません。そこで、人が理解しやすいラベルはGUI部品に隣接して表現されるという性質を活用して、GUI部品と対応付け、説明情報として活用できる技術を開発しました。本技術により、操作ログから自動的に操作手順を説明する文章が生成できるため、手間をかけずに操作内容を可視化することが可能になります。
図3 操作共起性による類似度評価と操作の説明情報生成
※1 RPA(Robotic Process Automation)
業務効率化などを目的としてオペレータ操作を代行して自動化するソフトウェア技術や製品の総称
※2 GUI(Graphical User Interface)
ユーザーの使いやすさを重視し、アイコンやボタンなどを用いて直感的に分かりやすくコンピュータに指示を出せるようにしたインターフェース
※3 共起性
任意の文書や文において、ある文字列とある文字列が関連性をもって同時に出現する性質