オンサイトで利用可能な4コアMCFの建設・運用・保守技術のラインナップ化

2024年(令和6年)

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4コアマルチコア光ファイバの設計、光ケーブルへの実装に加え、オンサイトでの建設・保守・運用を可能とする接続・分岐技術、並びにそれらを用いたケーブル接続・分岐技術、局内のMCF収容・配線技術、試験技術をラインナップ化しました。
NTT持株会社ニュースリリースはこちら: https://group.ntt/jp/newsrelease/2024/11/15/241115a.html

(1) 研究の背景
Well-beingな世界の実現をめざすIOWN構想 の大容量光伝送基盤を実現する要素技術の1つであるマルチコア光ファイバの研究開発を進めており、これまでに現在の光ファイバと同じ細さのガラスの中に、4個の光の通り道を多重した4コアMCFの研究開発を推進しています(図1)。これまで実際に4コアMCF光伝送路を商用導入する段階の課題として、オンサイトで利用できる建設・保守・運用技術の確立が不可欠でした。例えば、MCFは光ファイバ断面内の中心以外の場所にコアが存在するため、MCF同士を接続するためには回転方向の調心を行い対応する4個のコアの位置を揃えることが必須となります。また、MCF光伝送路の陸上光伝送システムへの導入初期では、既存の1個のコアを有する光ファイバとの相互接続技術が不可欠です。
さらに、不慮の事故や故障に迅速に対応するためには、これらの相互接続技術がオンサイトで利用可能なレベルで確立されていることが求められます。

 IOWNがめざす大容量化の実現に向けた光ファイバ技術のロードマップ

図1 IOWNがめざす大容量化の実現に向けた光ファイバ技術のロードマップ

(2) 4コア光伝送路の建設・保守・運用を実現する要素技術
4コア光伝送路の中核技術である、現在の光ファイバと同じ細さのまま4個のコアを多重したMCF技術、並びに直径約20mmの中に最大8,000コア(4コアMCF2,000心)までを実装可能とする細径高密度光ケーブル技術に加え、MCFの接続・分岐に関する2つの要素技術を確立しました(図2)。

  • 側面画像調心技術: 対向する2本の4コアMCFの側面画像を観測・解析することで4つのコアの位置を特定し、自動で対向するコアの位置を回転調心します。本技術を汎用的な光ファイバ融着接続器に組み込むことにより、実験環境や工場だけでなく、オンサイトでMCF同士の恒久接続を実現することができます。
  • FIFO(Fan-in-Fan-out)デバイス技術: 石英系PLC(Planar Lightwave Circuit)導波路を積層した独自の2層構造を用い、1本の4コアMCFと1個のコアを有する既存光ファイバ4本との合分岐を実現しました。石英系PLC導波路は既存の光伝送システムにおける光パワー分岐などにも広く利用されており、高信頼で量産性にも優れる特長を有します。

さらに、上述の接続・合分岐技術を活用し、地下管路内および局内における光伝送路の要素技術を確立しました。

  • MCFケーブル接続・分岐技術(地下クロージャ): MCFを実装した細径高密度光ケーブル同士、もしくは既存の光ファイバ(SMF: Single Mode Fiber)ケーブルとの、地下設備内における接続・分岐を実現します。4コアMCFは既存光ファイバと同じ細さのため、MCFケーブルの外径も既存光ファイバケーブルと統一でき、地下クロージャのMCF化においても既存の地下クロージャの基本構造を効率的に流用することができます。
  • 局内MCF収容・配線技術(局内接続架): MCFケーブルを局内設備で終端し、上述のFIFOデバイスを介して既存光ファイバとの相互接続を実現します。また、接続架の収容単位をMCFとしFIFOデバイスをブラックボックス化することで、収容面積を4分の1以下に集積化することもできます。

最後に、これらの要素技術により構成される4コア光伝送路の光学特性を試験するための要素技術を確立しました(図3)。

  • MCF光伝送路評価技術: 光パルス試験により得られる波形を解析することで、4コア光伝送路の損失だけでなくコア間クロストーク(XT)の試験を実現します。既存の光伝送路試験に広く利用されている光パルス試験を用いるため、既存の試験装置や運用方法と互換性があり、4コア光伝送路の効率的な建設・保守・運用が可能となります。

4コア光伝送路の建設・保守・運用に必要な要素技術

図2 4コア光伝送路の建設・保守・運用に必要な要素技術

4コア光伝送路の試験技術

図3 4コア光伝送路の試験技術

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